「糸曽賢志の一方通行なおしゃべり」
第十九回「中国に行ってきました」
皆さん、こんにちは。人によってはこんばんは。糸曽 賢志(いとそ けんじ)です。
さて、今回は前回に引き続き『コルボッコロ』のアフレコについて書かせて頂きます。
最近暑くなってきましたが、皆様体調を崩したりしてないでしょうか?
そんな中、ボクは先日まで中国出張に行っていました。
そこで今回は、中国のアニメ事情について書かせて頂こうと思います。
中国へは1年に2・3回は仕事で来るのですが、主な出張理由は日本のアニメーション教育カリキュラムを 輸出するお仕事を手伝ったり、ソフトの使い方やアニメーションの基礎などを講義させていただいたり、 向こうのスタジオと提携してアニメーションを制作したりが中心になっています。
そもそも、ボクが中国に頻繁に行き来することになったのは、アミューズメントメディア総合学院の校長先生である 野口さんにお会いしたのがきっかけでした。
別のお仕事で偶然お会いしたのですが、話が弾んで色々なプロジェクトをご一緒させていただくうちに、 中国でのビジネスにもメインで参加させていただくことになったのです。
最初の頃は言葉もわからないし不安もありましたが、行ってみると楽しくて色々勉強になります。
特に最近は日本のアニメーションが注目されているようで、中国の地上波テレビでも日本のアニメが結構流れています。 特に子供に人気があるのは『鉄腕アトム』などで、特撮だと『ウルトラマン』のようです。
聞いたところによると、中国のアニメファンは1億人以上いるとのこと。
ほとんど日本の人口と同じですね。そう考えると、中国はビジネスチャンスのある国と言えるかもしれません。
ただ日本のニュースなどにも取り上げられていることがありますが、著作権に関する認識に違いがあるためコピー品などが 多く出回る傾向にあり、そこが問題になっているようです。
もともと教育方針が日本とは違うので、一概に中国の著作権に関する考えが違うとか言えないのが難しいところです。
ただ、中国を見ていると今後もコピー品などは減ることはないと思われるので、このまま今のような商品展開をしていると映像関連商品の売上は確実に下がります。 そうすると、制作スタジオが減ったり、予算の安い海外スタジオ中心に制作が進んだりして国内のアニメスタジオがどんどん衰退化する気がします。
じゃあ、どうすれば良いかって考えてみたのですが、商品自体の価格をコピー品よりも下げてしまうか、 商品を買った方が得と思わせる何らかの特典やアイディアを盛り込むのが良いのではないかと考えています。
商品自体の価格を下げる方法を実現するには、ハリウッド映画並みに膨大な数の商品が売れる確証がないと難しいと思います。
そんなわけでボクは、今後のコンテンツ産業の発展に少しでも寄与できないかなあと考え、商品そのものの価値を挙げる方法を様々な企業と組んで水面下で模索中です。
少し話がそれたので話を中国に戻しますが、様々なことに対して多少価値観が違うとはいえ、話してみると皆さん良い人ばかりだし考え方の違いで討論するのも勉強になるので ボクは中国に行くのが毎回楽しみだったりします。
中国は日本よりも暑く、乾燥しているので気候に慣れるまでなかなか大変だったりしますが、料理は美味しいですし良い所です。 もともとボクは偏食気味なのですが、中国に行くと日本人が普段食べない食材を食べることが多いので、好き嫌いが減るのもありがたかったりするんですよね。
「ヘビ」「ナマコ」「ウサギ」「イヌ」などなど、何でも出てくるので大抵のものは食べられるようになります。 とはいえ、未だに虫系は挑戦してません。
そんなわけで、皆さんも中国に行くことがあれば、向こうでのアニメーション事情をみるついでに色んなものを食べてみてくださいね。 きっと人生観変わるはず。
それでは、この辺でひとりごとを終わりにしたいと思います。 お目に触れた方にとって、何かが少しでも伝わっていれば、幸いです。
それでは皆様、またお会いしましょう。
いとそ けんじ
- 糸曽 賢志(いとそ けんじ)
- 1978年、広島生まれ。東京造形大学在学中に、アニメ制作会社でアニメーション制作に参加。
20歳で巨匠宮崎駿の弟子となり、ジブリ演出を学ぶ。
大学卒業後はゲーム会社に入社し、イラスト、グラフィックデザイン等に従事。
現在はフリーの映像作家として実写・アニメーションを中心に活動している。
2005年より早稲田大学、本庄市、日本映画監督協会の支援を受けて個人アニメーション制作に
取り組みつつ、早稲田大学内に置かれた自らの研究室で、映像を研究。
文化庁新進芸術家国内研修員にも認定されており、今、最も期待されている若手映画監督の一人である。
⇒加藤英美里×糸曽賢志アニメ 『コルボッコロ』完成インタビュー
⇒クリエイター糸曽賢志がもっとよくわかる!ロングインタビュー
⇒糸曽賢志オフィシャルウェブサイト(http://www.itoso.net/)